| 時空の彼方に うみちゃん
1.恭一の部屋
恭一:さぁて、今日はどれをダウンロードするかな?
(キーボード操作音)
恭一:サイバーワールド・・18禁か・・・新作だな・・・なになに?「このソフトは未成年者には刺激が強すぎる場合がありますので、18才未満の方の利用を禁じます。 このソフトはサイバーワールド社の最新技術であなたの意識を読みとり、あなたが心の底で念じている全ての希望を仮想現実内で叶えるものです」へーおもしろそうだな。えーっと、それから?・・・「起動したらサイバーワールドのツアーが始まります。インストラクターの指示に従ってください。インストラクターの指示に従っている限りあなたは安全にツアーを楽しむことができます」だって?なんか大げさだな。どうせエロゲーだろ?値段は・・100ドルか。ちょっと高めだけど・・まぁいいや。
(キーボード操作音)
恭一:ダウンロード&実行、と。
PC:ダウンロードが終了しました。インストールを開始しますか?
恭一:おおっ! すっげぇ。 音声メッセージ付きかぁ! Yes、と。(マウスクリック音)
PC:インストールが完了しました。インターネットへの接続の確認をしてください。アプリケーションを起動しますか?
恭一:Yes、と。(マウスクリック音)
(アプリ起動音 適当に「チャララーン」と)
PC:初めましてカンダ・キョウイチさん。私はあなたの専属インストラクター「クレオ」です。これからあなたをあなたの夢の世界にお連れする案内人です。
恭一:えっ?どうしておれの名前を?そうかクッキーだな?ゲーム本体がホストにあってこっちの情報を読みとってるのか・・
PC:ふふっ、違いますよ。私がキョウイチさんの心を読んでいるのです。
恭一:ええっ!キーボードもなにも操作していないのに・・そうか、一定の時間で次のメッセージがでるんだな? みんな同じことでびっくりするから同じメッセージでいいんだ。
PC:うふっそんなことないですよぉ。本当に私がキョウイチさんの心を読んでいるのです。これからはキーボードもマウスもいりません。心の中で「こうしたい」と念じてください。そうすればサイバーワールドの中であなたは自由自在に動けるはずです。質問はありますか?
恭一:おれの心を読んでいるだと? キーボードもマウスもいらないだと? そんなはずあるわけないじゃないか・・・
PC:(あきれたように)まだ信じないんですかぁ?じゃ、信じられるように・・キョウイチさんが今好意を寄せている女性はシンドウ・マコさんですね?
恭一:な、なんでわかるんだ・・・
PC:ふふっ 私はなんでも知ってるの。シンドウ・マコさんのパーソナルデータです。現在22才、身長165センチ、体重52キロ、バスト87,ウエスト52・・ま、ナイスバディですわね・・ヒップ」
恭一:ま、待ってくれ! 信じる!信じるから!
PC:よかった。それではサイバーワールドへのツアーを開始しますか?
恭一:あ、ああ・・
PC:では、モニターを見つめてください。
(キィーンという金属音)
恭一:うわっ!な、なんだ! 体が!
PC:(エコー)心配しないで・・心を楽にして・・開放して・・・
2.ホテルの部屋
(目覚まし時計の電子音)
恭一:う・ん、夢だったのか・・・え?ど、どうなってるんだ? ここは・・おれの部屋じゃない!
PC:キョウイチさんの心を通信回線に乗せてネットに取り込みました。 今あなたがいるのはインペリアルホテルのホームページです。
恭一:心をネットに乗せたって・・・本当に安全なんだろうな? 元に戻ることはできるんだろうな?
PC:大丈夫ですよぉ。 我がサイバーワールド社の技術は最高ですし、事故もこれまでに1件しかありません。
恭一:事故があるんじゃないか!100パーセント安全なわけじゃないんだろ? 戻してくれー!
PC:ゲームオーバーまでは戻れません。 今無理に戻すとその衝撃でキョウイチさんの心が壊れる、かも・・・それに前の事故はそのお客様がインストラクターの制止を振り切って無茶なさったから仮想世界が混乱して時空の彼方に飛ばされたのです。
恭一:じゃ、君の言うとおりにしてたら絶対に大丈夫なんだな?
PC:ピンポーン!
恭一:(笑い)ヘンなコンピュータだな。
PC:(嬉しそうに)それが我が社の技術です。 あ、それから「クレオ」って呼んでいただいて結構です。
恭一:わかったよ、じゃこれからどうしたらいいんだ?
PC:キョウイチさんの思うがままに・・・もし、時空混乱が起こりそうになったら私がお止めしますから、そのときだけは私の指示に従ってください。
恭一:わかった。じゃ、まずクレオの顔が見たい。
PC:申し訳ありません。私たちには実体データが与えられていないので、私には顔がないんです。そのかわり、キョウイチさんのデータから作ることができますが、データコンバートを実行しますか?
恭一:よくわからないけど・・やってくれ。
PC:データコンバートを実行します。
(金属音)
恭一:き、きみはマコ・・
マコ:ふふっ マコさんではありません。クレオです。キョウイチさんの異性データからイメージを作りました。
恭一:ええっ! マコじゃないのか。
マコ:でも、キョウイチさんがそれでいいならマコと呼んでもらっても構いません。
恭一:至れり尽くせりだな・・・じゃどこ行こうか。
マコ:キョウイチさんのパソコンの「お気に入り」に入っている範囲内でどこへでも行けますよ。このホテルも旅行代理店のサイトのリンクをたどってきているんです。
恭一:ふーん、そうか。
マコ:あっ、でも・・エッチなサイトには規則で行けないことになっているんです。
恭一:なんでぇ〜?
マコ:性的な興奮が極度に高まると、回線の負荷が大きくなってパンクする可能性があります。そしたら時空混乱が起こって二度と現実に戻れなくなりますよ。
恭一:(がっかり)なんだ、そうなのか・・・じゃ、とりあえず遊園地行って映画見てお茶して、えーとそれから・・・
マコ:いつものデートをする必要はありません。ここはなんでも望みの叶う世界。キョウイチさんの思いのままに。
恭一:そうだった。じゃパリに行こう。一度外国に行ってみたかったんだ。
3.パリ
(シャンソンなど流してパリの雰囲気)
恭一:うわっ!突然場面が変わるんだな。
マコ:ふふっ、もうパリですよ。
恭一:でも・・ここでどうしよう?言葉も通じないし・・・
マコ:話しかけてご覧なさい。
恭一:え?で、でも・・・
マコ:大丈夫だから。
恭一:あ、じゃ、じゃあ・・あの、えーと、すみません。
男性通行人:なんですか?
恭一:え?あ?・・あ・の・・あの、ユーロ・ディズニーランドにはどう行けば・・・
男性通行人:ああ、ディズニーランドね。ちょっと遠いよ。タクシーに乗るといい。
恭一:あ・ありがとうございました。・・・・本当に話が通じた・・・
マコ:ここはあなたの望みがなんでも叶うっていったでしょ。あなたの心の世界なんだから。でも、やっぱり遊園地なのね。
恭一:他に考えつかなくて・・・
4.ディズニーランド
(遊園地の雰囲気)
恭一:タクシーに乗るの忘れちゃったな。
マコ:でもちゃんと着いたでしょ。
恭一:それもそうだね。
(遊園地で遊ぶ様子を二人の笑い声をクロスオーバーさせて表現)
恭一:あー疲れた。
マコ:楽しかったぁ!仕事忘れちゃったわ。
恭一:仕事のことなんか忘れろよ、マコ。
マコ:でも・・・
恭一:メシ食いに行こう。マキシム・ド・パリだな。一度行ってみたかったんだ。
5.レストラン
(グラスの当たる音)
恭一:今日は楽しかった。
マコ:私も・・・
恭一:クレ・・いや、マコはコンピュータのプログラムなのに楽しいってわかるの?
マコ:ここはあなたの心の世界。ここではプログラムでさえ感情を持つことができるわ。
恭一:ふーん、そうなのか。じゃ、今ここでマコがおれを好きになって欲しいって念じればそうなるんだ。
マコ:そうね・・・
恭一:マコ・・おれ、君が好きだ。愛してる。
マコ:私も愛しているわ。 キョウイチさん。
恭一:ホテルに戻ろう・・・
6.ホテルの部屋
恭一:マコ・・
マコ:キョウイチさん・・ダメよ・・規則が・・・規則を破ると時空が混乱するわ。
あなたの心は永久にインターネットの中を漂流することになるのよ。
恭一:それでも構わない。マコとこうしていられるなら、もう現実に戻れなくなってもいい。永久に信号となってネットを駆けめぐろう。
マコ:いけない・・・
恭一:マコ、愛している。このまま、ずっとこのまま・・・
マコ:キョウイチさん・・・私も愛してる・・・
恭一:マコ・・
マコ:キョウイチ・・・(フェードアウト)
(ビーという警報音)
合成音声:事故発生。事故発生。IDナンバー1999カンダ・キョウイチ。 規則違反により時空転落。端末よりインストールプログラムの自動消去開始。事故発生。事故発生・・・
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