添付録 通信今昔物語 17 執筆者:うみちゃん

緊急寄稿 王様と私

世界中のアマチュア無線家が交信を望んで止まない1人のハムが亡くなりました。
フセイン・ビン・タラール1世。 ヨルダン・ハシミテ王国の国王です。 フセイン国王
が優秀なパイロットで熱心なアマチュア無線家であることは多くの人が知っていると思い
ます。 1990年の夏のことです。 まだ私の部屋にはエアコンがなく、汗だくで無線
機にへばりついていました。 なぜか? 21メガヘルツのSSB(無線電話の1方式)
でCQを出し続けている局を追っていたのです。 「JY1」これは世界でたった1局だ
け、ヨルダン国王にのみ許されたプリフィックス(国別識別符号)だけのコールサインで、
世界中のハムが交信することを夢見る無線局です。 
日本からは中東の局とは位置的に交信することは難しく、このときも非常に弱い信号でし
た。 汗をかきながら信号がもう少し強くなれば・・他の局が呼び始めなければ・・と祈
るような気分でその瞬間を待ち続けました。 平日でほとんどの人が仕事をしている時間、
ラッキーでした。 すうっと信号メーターの針が上がった瞬間、私は「飛べっ!」と心の
中で祈りながら声を張り上げました。 
電波は届きました。 "OK,You are59QSL?" "Yes,You are also59 Thank you,sir"
たったこれだけの交信でしたが感激でした。 
後で考えると王様に対して「Sir」とは何事か? もっと適切な単語があるはずですが、そ
のときは思いもしませんでした。 
私が出力10Wであることを大急ぎで伝えると"Oh! great, good luck!"とおっしゃってく

さったことは忘れられません。 第1話で書きましたが、ハムを始めるきっかけだったの
が「アラブの王様との交信」という広告だったので、10数年かかって一つの夢が叶った
ことになります。 
映画俳優のようにダンディーで颯爽としていて、いつもハンディートランシーバを手放さ
なかったアラビアンナイトの国の素敵な王様のご冥福を心からお祈りいたします。

99/02/08

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