添付録 未完成ショートショート 5 執筆者:☆PICO★

市場拡大

ドクターCの発明した人工食料は飛ぶように売れた。
時に西暦25**年。地球は人間であふれ、宇宙ステーションや、月や火星の植
民地の収容能力も限界に達していた。そんな時代に、食料が不足するのは当たり
前のことであったが、人々は化学栄養剤などの普及によって餓死するような心配
はなかった。何せ、人々が天然の食材を使った料理を口にすることができるの
は、法律で「年間3回まで」と定められていた。もちろん、法を犯して、ヤミの
食材を手に入れるお金持ちはいたようだが。
ドクターCが開発した新食料について解説しよう。食料というが、実際には薬み
たいなものである。ただ、今までの栄養剤が、栄養の補給だけで同じような味覚
しかなかったのに対し、この新食料はジャガイモ味、マグロ味、ビーフ味といっ
たように、自由に味付けすることができた。やわらかいゴムねんどのような食料
に、パウダーで栄養と味をつけて食べる。このパウダーの種類が実に多彩で、人
気の秘密だった。さらにすごいことに、一度体内を通過した新食料は、洗濯機で
洗うだけで何度でも食べることができるのだ。このころの地球ではリサイクルの
考えが徹底していたので、これも受け入れられた理由のひとつだった。
新食料は、決して消化されず、形が少し変わるだけだ。そのころの人間は、大し
た食料を食べていないので、胃の消化力も弱かった。新食料は、栄養パウダーを
味わいよく運ぶ役割を果たした。昔の人間なら「きたない」と思うかもしれない
が、消化されないのだから、色も変わらずにおいもない。
かくして、ドクターCのもとには、巨額の富がもたらされた。しかし、それだけ
ではとどまらなかった。販売会社を設立し、市場の拡大を計画した。その戦略
は、これまた開発されたばかりの時間輸送機(タイムマシン)を使って、20世
紀末のスーパーマーケット市場に送ろうというものだった。20世紀の人! も
しもスーパーマーケットで食べ物を買って、その食べ物を出したとき色が変わっ
ていなかったりしたら、それはドクターCの開発した新食料だと思ってくださ
い。だから、ためしに洗濯機にかけて・・

1999/1/12

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