| 添付録 | 「彩り」について考える | 1 | 執筆者:CIAO |
白
《白孔雀》
テレビで京都の良さをルポしている番組をみました。舞子さんの襟足をみていると日本はほんとに白が美徳とされていたのだなとつくづく思うことができます。美しく白く長い襟足は
なんとも妖しい文化ではないでしょうか?
私の今は亡き祖父は 日本画を描く事を趣味でした。私は
日本画の画材独特のニオイの中で育ちました。日本画材には胡粉というものがあり、祖父の話だと
胡粉と呼ばれる くさい絵の具は
貝殻を加工したものでできているらしく
なんとも有機的な潮のニオイが腐乱したような臭いがします。
日本の絵は 海の匂いがして
油絵は 脂の匂いがします。絵に憬れて
油絵のセットを母にせがんで買ってもらったのですが、さっさとやめてしまいました。油絵の匂いは私の体には
合わなかったようです。
夢見る夢子ちゃんだった私は
祖父の臭い画材の中で寝起きしながら
水平線を思ったものでした。すべての日本画の技法がそうかどうかは知りませんが祖父が好んで使っていた技法は、
まず白を一面に塗った上から
色を重ねて描く技法です。紙の上に一面に絵の具で白く塗る事で上に重ねる直線が美しく映えて参ります。
油絵には 躍動感があって
動物的な絵です。そんな面倒な工程はない世界です。しかし、日本画は
直線的で伸びやかな静の世界です。
海の近くで生まれて 育った私にとって日本画の持つ
潮の香は心地のよいものでした。貝や蟹のような匂いの絵の具で
水平線のような伸びやかな線を描き、すべての色を重ねてまいります。
幼かった私には、日本がどんな国かよくわかりませんでしたが
私が漠然と持った自国のイメージは なぜか孔雀でした。
孔雀は 平和公園のハト以上に
私には特別な親しみのある動物でした。当時通っていた小学校 で
ウサギ小屋のとなりで2羽の孔雀を飼っていたのです。1羽はきらびやかな色彩で曼荼羅を背負っているように威厳があり、もう一羽は
白孔雀でした。この子の白い襟足ときたらほんとうに
美しく舞子さんのドウランで染めた襟足のようなのです。祖父にプレゼントするために古本屋で日本画の本を探していますと、白い孔雀の絵を見つけて感動した覚えがあります。孔雀は日本の鳥ではないのにどうしてこんなに日本的なのだろうと幼かった私の心に
その絵だけがこびりついてしまいました。日本の鳥でないはずの異国の鳥のはずの孔雀は
その絵と学校の孔雀の性で、とても日本的な鳥に映ったのです。
聞くと 孔雀は本来 あのきらびやかな羽を持っているのが普通で
白い種は動物園などで飼育されているうちに生まれた突然変異の種だと知ってからも
彼女のことが(雄だけど)幽閉されたお姫様のようで
毎朝、登校すると真っ先に見に行ったものでした。
岩国の白ヘビもそうですが アパデントもびっくりな白い動物を
生み出して 日本人を喜ばせます。なぜそんなに
白がすきなのか、日本人は
さきほど書いた「貝白」のほかに「鉛白」といって人体に有毒なものを
化粧道具として使っていたそうです。歌舞伎役者は鉛毒におかされた者もいたそうです。白くするためには毒をも辞さないところもあったようです。
《色白は 七難かくす》なんていうけれど、7難を隠すために
病気になってどうする?とは思いますが
「主人のために奇麗になりたいだけのためにしたんです。奇麗になるためのエステのためのお金は自分で稼がなくてはいけないと思ったんです」なんてことを、
テレビに夫婦で生出演してだんなに問い詰められた奥さんがいけないバイトを打ち明けてました。やらせかどうか確かめようがないけど、夕鶴の《おつうさん》みたいな言い方をして
なにするねん。と怒ったのもつい先日のこと。美意識って
もしかして
この世で一番考えなくちゃいけない命に関わる事なのではないかしらん.....。などと思ったしだいです。
お正月が近づいて 初詣などでは
にわかに日本文化の様相になるのでしょうね。着物の世界もまた
孔雀の羽の文様のように 2次元的で多彩な反面、色を極端に押さえた白の世界がベースになっています。
異国のような自国の衣装は
重く、美しく、女性を彩るのでしょう。祖父の技巧そのままに日本の女性は白の長じゅばんに
様々な色を重ねて楽しみます。自分の根底に置いておく、白い色を
初日の出に捜したいと思います。
1998/12/31
| 前回 | インデックス | 次回 | 感想はこちらへ | ホーム |