添付録 ワイン考現学あるいは現象学 2 執筆者:BIBOERGOSUM

ワイン考現学あるいは現象学/ソムリエなんかいらない

 多言數窮。言者不博、博者不言。
 ワイン通というのは、只ワインに詳しい人を言うわけではありません。失敗の海を泳ぎ、後悔の山をよじ登ってなお進む鉄人レースの選手のような人を言います。予め失敗して待てる人を言います。1,000円の買い得ワインを見つける前に、ベンツやらマンションをお腹を通してあります。たとえ2,000円でも、想定よりひどければ大いに怒り、3万円でも、まあこんなもんだろうと収める。大いに求めれば大いに失う。だから、取り敢えずは失望して待って置くんです。そうすれば、予想外に良いじゃないかと喜べます。大いに期待すれば大いに失望します。
 こんな人達を多く知っていますが、皆さんはなりたいですか?

 昨年読んだ本というのは堀田善衛さんをちょっとくらいで、後は購読中の「現代思想」くらいのもんです。おお、あれを読まされた!渡辺直行弁護士が恩師S先生の還暦記念論文集に書かれた「現代刑事政策と責任の問題」です。これは、渡辺先生の執筆中に多少お話しして、この話しが論分中に反映しているということなので、「読め」ということになった訳です。刑法論文なんか20何年振りでしたが、新鮮でした。
 与太話はさておき、問題は「失楽園」です。ミルトンも読んでいませんが、渡部昇一氏のも読んでおりません。川島なお美さんの果敢なヌードで評判になったというテレビも見ておりません=テレビが無いんです。この番組内容と直接絡むのかどうなのか判りませんが、妙にシャトー・マルゴーの名前が彼方此方に出てきていささか当惑しました。
 シャトー・マルゴーは大好きなワインです。さる店が1959ものを放出すると聞いて、大型リュックサックに航空便用発泡スチロール・パックを担いで新幹線で掛け付けました。36本の中から色と液面の高さを調べて、その内の12本を買い付けたのは1989年です。買値はいくらだと思いますか?最近では20万円するそうですが、私の買値は17,500円でした。まあ、まともに売ったのは半分で、半分は自分で飲んでしまいましたがね。シャトー・ラフィットのバロン・エリックがマルゴーを「深窓のご令嬢」と評しておられましたが、この12本の御蔭で納得しましたね。その年はマルゴーの所有者(現在はフィアットと共有)メンゼロプーロス家のコリーヌさんとお会いして、1961年も飲ませていただきました(こちらはご招待ということでタダ)。 
 抜栓したてから辺りを芳香が充満する、銘酒が銘酒たる本領を発揮するには永い年月を待たなければなりません。シャトー・ムートンのバロン・フィリップは20年を経ないムートンは、ムートンでなくアニョー(仔羊肉)でしかない、と言われたはずです。それが待てないなら「時間を金で買う」ほかありません。

1999/1/8

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